青髭


シャルル・ペローの物語 : 青髭

現代語訳:Relax Stories TV



青髭」この物語は、秘密と好奇心、そして恐怖と救済が織り交ぜられた、心を揺さぶる一作です。皆さんがこの物語を通じて、人間の心理や感情の深淵を垣間見ることができれば幸いです。


夜の帳が降りる頃、静かな部屋に一冊の古びた本が開かれた。ページをめくる音が静けさの中に響く。その本が語るのは、恐ろしき青髭の男と彼の妻の物語。グリム童話ではなく、フランスの民話を元にしたシャルル・ペローの手によるこの物語は、表面上は青髭の持ち主とその妻のドラマを描いているが、その奥には、人間の好奇心と秘密、そして罪と罰についての深い洞察が隠されている。


読者よ、物語の終わりには、日々の生活で直面するさまざまな状況を理解し、適切に対処するのに役立つ教訓が待っている。さあ、あなたも心地よい場所に身を落ち着け、この壮絶な物語の世界へと一緒に足を踏み入れてみよう。ページをめくるごとに、心の奥底に眠る感情が呼び覚まされることであろう。


さあ、物語の世界への旅が始まる。この一瞬を楽しみ、主人公たちの運命に心を寄せてみてください。


昔々、都会と田舎に、大きな豪邸を構えて、金の盆と銀の皿を持ち、美しい装飾と豪華な家具、そして、全金塗りの車まで持っている男がいました。


こんな幸せな身分でしたが、ただ一つ、運の悪いことは、恐ろしい青髭を生やしていることで、それはどこの奥さんでも、娘さんでも、この男の顔を見て、驚いて、逃げ出さない人はいませんでした。


さて、この男の豪邸の近くに、身分のいい奥さんがいて、二人、美しい娘さんを持っていました。この男は、この娘さんのうちどちらでもいいから、一人、嫁にもらいたいと言って、たびたび、この奥さんを説得しました。しかし、二人が二人とも、娘たちは、この男を、それはそれは嫌っていて、逃げ回ってばかりいました。


何しろ青髭を生やした男なんか、考えただけでも、ゾッとするくらいですし、それに、胸が悪くなるほど嫌なことには、この男は、前からも、何人か奥さまを持っていて、しかもそれが一人残らず、どこへどう行ってしまったか、行方が分からなくなっていることでした。


そこで、青髭は、これは、この娘さん親子の気分を取って、自分が好きになるように仕向けることが、何より近道だと考えました。そこで、あるとき、親子と、その他近所で知り合いの若い人たちを大勢、田舎の豪邸に招いて、一週間以上も留めて、ありったけのもてなし振りを見せました。


それは、毎日、毎日、野遊びに出る、狩りに行く、釣りをする、ダンスの会だの、夜会だの、お茶の会だのと、目の回るような忙しさでした。夜になっても、誰も寝床に入ろうとするものもありません。宵が過ぎても、夜中が過ぎても、みんなそこでもここでも、おしゃべりをして、笑い騒いで、ふざけっこしたり、歌を歌い合ったり、それはそれは、賑やかなことでした。


とうとうこんなことで、何もかも、順調にうまくはこんで、末の妹の方がまず、この豪邸の主人の髭を、もうそんなに青くは思わないようになり、おまけに、立派な、礼儀正しい紳士だとまで思うようになりました。そして、家に帰って間もなく、結婚式が執り行われました。


一ヶ月ほど経ったある日、青髭は奥さんに向かって言いました。「これから、重要なビジネスのために、どうしても6週間、田舎へ出張しなければならない。その間、退屈しないように、友人や知り合いを邸宅に招いて、自分がいる時と同じように楽しく過ごしてもらっても構わない。」




そして、青髭は続けました。「これらは私の最も大切なツールが入っている大きな戸棚の鍵だ。これは普段使わない金銀の皿が入っている戸棚の鍵だ。これは金貨と銀貨がたくさん入っている金庫の鍵だ。これは宝石箱の鍵だ。これは部屋全ての合い鍵だ。そして、ここにもう一つ、小さな鍵がある。これは地下室の大廊下の一番奥にある小部屋を開ける鍵だ。どの戸棚でも、どの部屋でも、開けてみるも中に入ってみるも君の自由だ。 ただし、この小部屋だけは、絶対に開けてはならない。ましてや、中に入ってはならない。これは厳命に守るべきだ。万が一、それに違反すれば、私は怒り、何をするか分からないぞ。」


奥さんは、指示通りに必ず守ると約束しました。そして、青髭は奥さんに優しくキスをして、四輪馬車に乗って出張に出かけました。


それから、奥さんの友人や知人たちは、招待を待つことなく、先を争って集まってきました。新婚当初の豪華な住まいの様子を、皆どれほど見たかったことでしょう。ただ、主人が家にいるときは、青髭の存在が怖くて、誰も近づくことができませんでした。




皆は居間、客間、大広間から、小部屋、衣装部屋と、一部屋ずつ見て回りましたが、奥へ奥へと進むほど、部屋はますます豪華で美しくなっていきました。


最後に、家具でいっぱいの大きな部屋に来ました。その中の道具や飾り物は、この邸宅の中でも、一等豪華なものばかりでした。壁掛けでも、寝台でも、長椅子でも、箪笥でも、机や椅子でも、頭のてっぺんから足の爪先まで映る鏡でも、それは無尽蔵にたくさんあり、無尽蔵にピカピカ光って、美しいので、誰もがただ感嘆し、ふうと、ため息をつくだけでした。鏡の中には、水晶の縁取りがついたものもありました。金銀メッキの縁取りがついたものもありました。何もかも、これ以上なく素晴らしいものばかりでした。


お客たちは、まさかこれほどまでとは思わなかった友人の運の良さに、改めて感心したり、羨ましがったり、終わりがありませんでしたが、ご主人の奥さんは、どれほど豪華な部屋や装飾を見て回っても、ただ焦れったいばかりで、全く楽しくもありませんでした。それは、夫が出かける前に厳しく言いつけていった地下室の秘密の小部屋が、ずっと気になって気になって、仕方なかったからです。


禁止されているものほど、人間は見たくなるものです。そのうちに、奥さんは我慢できなくなり、もうお客さんに対して失礼だと思う余裕もなく、一人でそっと裏の階段を降りて、何度も何度も、首の骨が折れるかと思うほど激しく柱や梁にぶつかりながら、無我夢中で走り出しました。


しかし、いざ小部屋の扉の前に立ってみると、さすがに夫の厳しい言いつけを思い出しました。それに逆らったら、どんな不幸な目に遭うかわからない、そう思ってしばらくためらいました。しかし、誘惑の手がどんどん強く引っ張るので、それを振り切ることはできませんでした。そこで、小さな鍵を手に取って、震えながら、小部屋の扉を開けました。


窓が閉まっているので、最初は何も見えませんでした。そのうち、だんだん暗闇に目が慣れてくると、床の上には血の塊がたくさんこびりついていて、五六人の女性の死体を並べて壁に立てかけたのが、血の上に映って見えました。これは、青ひげが一人一人、結婚した後で殺した女性たちの死体でした。これを見た瞬間、奥さんは息が止まり、体が固まって動けなくなりました。そして、扉の鍵穴から抜いて手に持っていた鍵が、いつの間にか滑り落ちたのも知らずにいました。


しばらくして、ようやく我に返ると、奥さんは慌てて鍵を拾い上げて、扉を閉めて急いで二階の居間に戻り、ほっと息をつきました。しかし、いつまでも胸がドキドキして、正気が戻らないようでした。






見ると、鍵に血がついているので、何度もそれを拭いて取ろうとしましたが、どうしても血が取れません。水につけて洗ってみても、石鹸と研磨砂をつけて、砥石でゴシゴシこすってみても、一向に痕跡が見えません。血のついた跡は、ますます濃くなるばかりでした。それもそのはず、この鍵は魔法の鍵だったのです。ですから、表側の血を落としたかと思うと、それは裏側に、いつの間にか、より濃く滲み出していました。


その日の夕方、青ひげが突然帰宅しました。それは、まだ遠くまで行っていない途中で、ビジネスが順調に進んだという報告を聞いたからだと、青ひげは説明しました。突然帰ってきたとき、奥さんは驚きましたが、一生懸命、嬉しそうな顔を見せていました。


翌朝、青ひげはすぐに、奥さんに預けた鍵を出すように言いました。そう言われて、奥さんが鍵を出したとき、その手の震え方を見て、青ひげはすぐに気づきました。


「おや。」と、青ひげは言いました。「小部屋の鍵が一つないぞ。」


「それなら、きっと、あちらのデスクの上に置き忘れたのでしょう。」と、奥さんは答えました。


「すぐに持ってこい。」と、青ひげは怒った声で言いました。


何度もあちこちに行ったり来たり、混乱した後で、奥さんは渋々鍵を出しました。青ひげは、鍵を受け取ると、怖い目でじっと見つめていましたが、


「この鍵の血はどうしたのだ。」と言いました。


「知りません。」と、泣きそうな声で答えた奥さんの顔は、死人よりも青ざめていました。


「何、知らないだと。」と、青ひげは言いました。「私はよく知っているよ。君はよくも思い切って、小部屋の中に入ったな。大胆だな。よし、そんなに入りたければ、あそこへ入れ、入って、そこにいる奥さんたちの仲間になれ。」


こう言われると、奥さんは、すぐに夫の足元にひざまずき、心から反省した様子で、もう絶対に、命令には逆らいませんから、と言って、謝りました。これほど美しい人の、これほど悲しい姿を見ては、岩でも溶け出したでしょう。しかし、この青ひげの心は、岩よりも、金よりも、硬かったのです。



「奥さん、あなたは死ななければならない。今すぐに。」と、青ひげは言いました。


「私、どうしても死ななければならないのでしたら。」と、奥さんは答えて、目に涙を溜めて、夫の顔を見ました。「せめてしばらく、祈りをささげる時間だけ、待ってくださいまし。」


「仕方がない、7分半だけ待ってやる。だがそれから、1秒も遅れることはならないぞ。」と、青ひげは言いました。


一人になると、奥さんは、姉の名前を呼びました。


「アンヌ姉さん(アンヌというのは、姉の名前でした。)アンヌ姉さん、お願いです、塔の頂上まで上がって、兄たちが、まだ来ていないか見てください。兄たちは、今日、訪ねてくる約束になっています。見えたら、急いで来るように、合図をしてください。」


アンヌ姉さんは、すぐに塔の頂上まで上がって行きました。半ば狂ったようになった奥さんは、かわいそうに、ずっと、叫び続けていました。


「アンヌ姉さん、アンヌ姉さん、まだ何も来ないの。」


すると、アンヌ姉さんは言いました。


「日が照って、ほこりが立っているだけですよ。草が青く光っているだけですよ。」


そのうちに青ひげが、大きな剣を抜いて手に持ち、全力で、怒鳴り立てました。


「すぐに下りてこい。下りてこないと、私の方から上がって行くぞ。」


「もう少し待ってください、お願いですから。」と、奥さんは言いました。そして、とても小さな声で、「アンヌ姉さん、アンヌ姉さん、まだ何も見えないの。」と、叫びました。


アンヌ姉さんは答えました。


「日が照って、ほこりが立っているだけですよ。草が青く光っているだけですよ。」


「早く下りてこい。」と、青ひげは叫びました。


「下りてこないと、上がって行くぞ。」


「今、参ります。」と、奥さんは答えました。そして、その後で、「アンヌ姉さん、まだ何も見えないの。」と、叫びました。


「ああ。でも、大きな砂煙が、こちらの方に向かって、立っていますよ。」と、アンヌ姉さんは答えました。「それはきっと、兄たちでしょう。」 



「おやおや、そうではない。羊の群れですよ。」


「こら、下りてこないか、お前。」と、青ひげは叫びました。


「今すぐに。」と、奥さんは言いました。そして、その後で、


「アンヌ姉さん、アンヌ姉さん、まだ、誰も来なくて。」


「ああ、二人の馬に乗った人がやってくるわ。けれど、まだずいぶん遠いのよ。」


「ああ、ありがたい。」と、奥さんは、嬉しそうに言いました。「それこそ、兄たちですよ。私、兄たちに、急いで来るように合図しましょう。」


そのとき、青ひげは家ごと震えるほどの大声で怒鳴りました。奥さんは、しおしお、下へ降りて行きました。涙をいっぱい目にためて、髪の毛を肩に垂らして、夫の足元にひざまずきました。


「今さらどうなるものか。」と、青ひげはあざ笑いました。「早く死ね。」


こう言って、片手に奥さんの髪の毛をつかみながら、片手で剣を振り上げて、首を切ろうとしました。奥さんは、夫の方を振り向いて、今にも倒れ入りそうな目つきで、ほんのしばらく、身づくろいする間、待ってくださいと、頼みました。


青ひげはこう言って、剣を振り上げました。「だめだ、だめだ。神様に任せてしまえ。」


その瞬間、表の扉に、ドンと、激しくぶつかる音がしたので、青ひげは思わず、驚いて手を止めました。瞬時に、扉が開いたと思うと、すぐに騎兵が二人入って来て、いきなり、青ひげに向かって来ました。これは奥さんの兄弟で、一人は竜騎兵、一人は近衛騎兵だということを、青ひげはすぐに知りました。


そこで、慌てて逃げ出そうとしましたが、兄弟はもう、後ろから追いついて、青ひげが、靴脱ぎの石に足をかけようとするところを、胴中を一突き突き刺して、倒してしまいました。





でもそのときには、もう奥さんも気が遠くなって、死んだようになっていましたから、とても立ち上がって、兄弟たちを迎える気力はありませんでした。


さて、青ひげには、後継ぎの子がいませんでしたから、その財産はすべて、奥さんのものになりました。奥さんはそれを、姉さんや兄たちに分けてあげました。


珍しがり、それはいつでも心を引く、軽い楽しみですが、一度、それが満たされると、もうすぐ後悔が、代わってやってきて、そのため高い代価を払わなくてはなりません。




いかがでしたか?


「青髭」の物語から得られる教訓はいくつかありますが、以下に主なものを挙げてみます。


好奇心は節度を持つべき

奥さんの好奇心が彼女を危険な状況に追い込みました。好奇心は新しい知識や経験を得るために重要ですが、節度を持つことが大切です。


秘密は破られる

青髭は奥さんに対して小部屋の秘密を守るように命じましたが、結局その秘密は破られました。これは、秘密は最終的には明らかになるという教訓を示しています。


権力の乱用は結局自滅につながる

青髭は自分の妻に対して絶対的な権力を行使しましたが、最終的にはそれが彼の破滅を招きました。これは、権力の乱用は結局自滅につながるという教訓を示しています。

これらの教訓は、物語の中で描かれた特定の状況に基づいていますが、現実の生活にも適用することができます。それぞれの教訓が、私たちが日々の生活で直面するさまざまな状況を理解し、適切に対処するのに役立つことを願っています。


この物語が皆さんの心に何か新しい発見や感動をもたらしてくれたなら、これ以上の喜びはありません。次回もまた、新たな物語で皆さんと一緒に冒険できることを楽しみにしています。


それでは、皆さん、次回もお楽しみに。


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