029金の毛が3本生えた鬼
029金の毛が3本生えた鬼
現代語訳:𝑅𝑒𝓁𝒶𝓍 𝒮𝓉𝑜𝓇𝒾𝑒𝓈𝒯𝒱
はじめに
「金の毛が3本生えた鬼」は、グリム兄弟によって収集されたドイツの民話です。この物語は、貧しい女性が生まれたばかりの息子を王に預けるところから始まります。息子は「幸運の子」として予言され、14歳になると王女と結婚する運命にあります。しかし、悪意を持つ王はその予言を阻止しようとします。息子は様々な試練を乗り越え、最終的に悪魔の金の毛を3本手に入れることで、王の悪事を暴き、王女と結婚することができるのです。この物語は、運命と正義の力を強調しています。
人生の教訓
真実と正義の力
息子は数々の試練を乗り越え、最終的に正義が勝利します。この物語は、真実と正義が最終的に勝つことを教えてくれます。
運命の力
息子は「幸運の子」として予言され、その運命に導かれて困難を乗り越えます。この物語は、運命が持つ力と、それに対する信念の重要性を示しています。
勇気と決意
息子は悪魔の金の毛を手に入れるために危険な旅に出ます。この物語は、目標を達成するためには勇気と決意が必要であることを教えてくれます。
善行の報い
息子は善行を積み重ねることで、最終的に幸せを手に入れます。この物語は、善行が報われることを示しています。
「昔、1人の貧しい女がいて、男の子を産みましたが、羊膜をつけて生まれたので14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言されました。その後まもなく、たまたま王様が村にやってきて何かニュースがあるかと尋ねると、誰も王様だと知らなかったので、人々は「羊膜をつけた子が生まれましたよ。そんなふうに生まれた子は何をしてもうまくいくのです。14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言もされています。」と答えました。
王様は悪意を抱いていたので、その予言に怒り、両親のもとへ行くと、とても愛想良く接し、「貧しい人たちよ、子供を預からせてくれれば世話をするよ。」と言いました。最初、両親は断りましたが、その見知らぬ人がたくさんの金をくれると言ったので、「幸運の子供なのだから、その方が万事うまくいくに違いない」と考え、とうとう承諾し、子供をあげました。
王様は子供を箱に入れ、馬に乗って出発しましたが、深い川に差し掛かると、箱を川に投げ入れ、「これで望ましくない求婚者から娘を解放したのだ。」と考えました。しかし、その箱は沈まず、船のように浮かび、一滴の水もしみ込みませんでした。そして、王様の首都の2マイル内まで漂っていくと、水車があって水車ダムで止まりました。水車番が運良くそこに立っていて、箱に気づき、鉤で引っ張りあげました。大きな宝物を見つけたと思っていたのですが、開けてみると、中には元気で生き生きしたかわいい男の子がいました。それで粉屋夫婦に持っていくと、二人には子供がいなかったので喜んで、「神様がこの子を授けてくださった。」と言いました。二人は拾い子をとても大事に世話したので、立派に育ちました。
あるとき突然のこと、たまたま王様は水車小屋に入ってきて、粉屋に「あの背の高い若者はお前たちの息子か?」と尋ねました。「いいえ、拾った子なんです。14年前、箱に入って水車ダムまで流れてきたんです。それでウチの若いのが水から引っ張りだしたんです。」と粉屋は答えました。それで王様は、その若者が自分が川に捨てた幸運の子供に他ならないと知り、「私の善良な人々よ、妃への手紙を若者に頼めないか?方びとして2粒の金を与えよう。」と言いました。粉屋はすぐ返事をし、若者に準備をするよう言いました。
それから王様はお妃様に手紙を書きましたが、そこには手紙を持って着いたらすぐ若者を殺して埋めるように、そして自分が帰るまでに全て終わっているように、と書いてあったのです。若者はこの手紙を持って出発しましたが、道に迷い、夜には大きな森に来ました。暗闇の中に小さな明かりが見えたのでそちらに行くと、小屋に着きました。中に入ると、老婆がたった一人で暖炉のそばに座っていました。若者を見ると、ハッとし、「どこから来たんだい?どこに行くんだい?」と訊きました。「水車小屋から来たんだ。お妃さまのところに行きたいんだが、手紙を持っていくんだけど、森で道に迷ってしまったので、ここで夜を過ごしたいんだ。」と若者は答えました。「可哀そうな子だよ。お前は泥棒の隠れ家に来てるんだよ、帰ってきたらお前を殺してしまう。」と老婆は言った。
「来たっていいさ。怖くないよ。だけど、とても疲れているから、これ以上どこにも行けないよ。」と若者は言って、ベンチの上に寝そべって眠ってしまいました。
その後まもなく、泥棒たちが帰ってくると、「そこで眠っているよそ者は誰だ?」と怒って尋ねました。
「ああ、道で迷った無邪気な子供だよ。可哀そうだから、入れてやったのだ。」と老婆は答えました。
泥棒たちが手紙を開いて読むと、若者が着いたらすぐに殺すようにと書いてありました。すると冷酷な泥棒たちもさすがに可哀そうに思って、親分がその手紙を破り、別の手紙を書きました。若者が来たらすぐに王様の娘と結婚させるように、と書いたのです。
それから、次の朝まで静かに眠らせておき、若者が目覚めると、手紙を渡して正しい道を教えてあげました。そしてお妃さまは手紙を受け取って読むと、書かれた通りにやり、壮大な結婚式の宴を準備させました。
王様の娘は幸運の子供と結婚し、若者がハンサムで優しいため、喜び満ちて暮らしました。しばらくして王様が宮殿に戻ると、予言が実現され、その子供が娘と結婚していました。
それで「どうしてこうなったんだ?わしは手紙で全く別の命令を出したぞ。」と言いました。お妃さまは手紙を渡し、「書かれていることをご自分でご覧になってください。」と言いました。
王様は手紙を読み、別の手紙とすり替えられたことが全くよくわかりました。それで若者に「あずけた手紙をどうした?なぜその代わりに別の手紙を持ってきた?」と尋ねました。
「何もわかりません。森で眠ったとき、夜の間に変えられたに違いありません。」と若者は答えました。王様はカッとなって「何でもお前の思い通りにはさせないぞ。娘と結婚する者は地獄の鬼の頭から3本の金髪をとってこなくてはならない。」と言いました。
こうして、王様は若者を永遠に除きたかったのです。しかし幸運の子供は「金の髪の毛をとってきます。私は鬼を恐れません。」と答えると、別れを告げ、旅に出発しました。
「道を行くと大きな街に着きました。門番が「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると、「じゃあ、市場の泉が昔はワインを出したのに、乾いて、今は水すら出さないのはどうしてか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。
それから、さらに進むと、別の街に着き、そこでも門番が「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると、「じゃあ、街のりんごの木が昔は金のりんごを実らせたのに、今は葉っぱすら出さないのはどうしてか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。
それから、また進んでいくと、渡らなければならない広い川に着きました。渡し守は「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると、「じゃあ、おれがどうしていつも行ったり来たり漕いでいなくてはいけなくて決して解放されないのか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。
川を渡ると、地獄の入口に着きましたが、そこは黒くて中は煤けていました。鬼は留守でしたが、鬼のおばあさんが大きな肘掛け椅子に座っていました。「何の用だい?」とおばあさんは尋ねましたが、あまり意地悪そうではありませんでした。「鬼の頭から3本の金髪を取りたいんだ。さもないと、妻といられないんだ。」と若者は答えました。「それは随分な要求ですね。鬼が帰ってきたら、お前の命が危ないよ。まあ、でも可哀そうだから助けてやらんでもないがね。」とおばあさんは言いました。
おばあさんは若者をアリに変え、「私の服の折り目に這って入りなさい。そこにいれば無事だろう」と言いました。「わかりました。そこまではいいんですが、そのほかに知りたいことが3つあるんです。市場の泉が昔はワインを出したのに、乾いて、今は水すら出さないのはどうしてか、りんごの木が昔は金のりんごを実らせたのに、今は葉っぱすら出さないのはどうしてか、渡し守はどうしていつも行ったり来たり漕いでいなくてはいけなくて決して解放されないのか。」
「そりゃあ難しい質問だね。だけど、静かにして私が3本の髪の毛を引き抜くとき鬼が言うことをよく注意して聴きなさい。」とおばあさんは答えました。夜になると鬼が帰ってきて、入るなり空気が澄んでいないと気づきました。「人間の肉の匂いがする。ここは異常なしというわけではないな。」と言い、あらゆる隅に首を突っ込み捜しましたが、何も見つかりませんでした。おばあさんは孫を叱り、「掃除したばかりだよ。全部片づけておいたのに、お前はまたひっくり返しているじゃないか。お前はいつも鼻の中に人間の肉の匂いを入れっぱなしなんだよ。座って夕食を食べなさい。」とおばあさんは言いました。
鬼が食事を終えた後、疲れた様子で頭をおばあさんの膝に乗せ、少しシラミを取ってほしいと頼みました。それからすぐにいびきをかき、深く眠り込みました。すると、おばあさんは一本の金の髪の毛をつかんで抜き、自分のそばに置きました。
「わあ、何をしているんだ?」と鬼は叫びました。
「悪い夢を見てたんだよ。それで君の髪をつかんだんだ。」とおばあさんが答えると、「じゃあ、どんな夢だったの?」と鬼が尋ねました。
「市場の泉が昔はワインを出していたのに、今は水すら出さないという夢を見たんだ。何が原因なのかな?」とおばあさんが言うと、「ああ、それなら知ってるよ。泉の石の下にヒキガエルがいるんだ。そのヒキガエルを殺せば、またワインが出てくるよ。」と鬼が答えました。おばあさんは再びシラミ取りを始め、とうとう鬼は窓が揺れるほどのいびきをかきながら眠りました。
その時、おばあさんは二本目の髪の毛を抜きました。「何をしているんだ?」と鬼は怒りました。「悪く思わないで、夢の中でのことだから。」とおばあさんは答え、「今度は何の夢を見たの?」と鬼が尋ねました。
「ある王国のリンゴの木が昔は金のリンゴを実らせていたのに、今は葉っぱすら出さないという夢を見たんだ。どうしてだろう?」とおばあさんが尋ねると、「ああ、それなら知ってるよ。ネズミが根をかじっているからさ。それを殺せば、また金のリンゴを実らせるだろう。でも、これからもっと長くかじられたら、木は枯れてしまうよ。でも、もう夢の話は十分だよ。また眠りを邪魔したら、耳を叩くからな。」と鬼が答えました。
おばあさんが優しく話しかけ、再びシラミ取りを始めると、鬼はとうとう眠り込み、いびきをかき始めました。それで、おばあさんは3本目の金髪をつかんで抜きました。鬼は飛び起きて唸り声を上げ、おばあさんが再びなだめなければ、ひどいことをしたでしょう。
「悪い夢を見たんだよ。」とおばあさんは言い、「じゃあ、どんな夢を見たの?」と鬼は興味津々で尋ねました。
「渡し守が一方からもう一方へと常に漕いでいるのに、解放されることがないと愚痴をこぼしている夢を見たんだ。どうしてなんだろう?」とおばあさんが尋ねると、「ああ、それなら知ってるよ。誰かが渡りたいと言ったら、渡し守は竿をその人に渡さなければならないんだ。そうすれば、その人が渡さなければならなくなる。それで渡し守は自由になれるんだよ。」と鬼が答えました。
おばあさんは3本の金髪を抜き終え、3つの質問に答えが出たので、鬼を放っておき、鬼は朝まで眠り続けました。鬼が再び出かけた後、おばあさんは服の折り目からアリを取り出し、幸運の子供を再び人間の姿に戻しました。
「さあ、3本の金髪をあげるよ。鬼が3つの質問に答えたとき、君は聞いていたよね。」とおばあさんが言いました。
「はい、聞きました。注意して覚えておきます」と若者が答えました。
「君は望みのものを手に入れたね。だから、もう帰ることができるよ」とおばあさんが言い、若者は困っているときに助けてくれたおばあさんに感謝の言葉を述べ、全てが上手く運んだことに満足し、地獄を去りました。
渡し守のところに着くと、渡し守は約束の答えを待っていました。「先に川を渡してくれ。そうしたら、どうやって自由になれるか教えてあげるよ」と幸運の子供は言いました。
そして反対側の岸に着くと、鬼から得たアドバイスを伝えました。「次に誰かが川を渡りたいと言ったら、棹をその人に渡せばいいんだ」と。
彼は旅を続け、実をつけない木が立つ街に到着しました。そこでもまた門番が答えを待っていました。そこで鬼から聞いたことを伝えました。「木の根をかじっているネズミを殺せば、再び金のリンゴが実るよ」と。
すると門番は感謝し、お礼として金を積んだ2頭のロバをくれ、ロバは彼についてきました。最後に、泉が枯れている街に到着しました。門番に鬼が言ったことを伝えました。「ヒキガエルが泉の中の石の下にいるんだ。それを探して殺さなければならない。そうすれば、泉は再びたくさんのワインを湧かせるだろう」と。
すると門番は感謝し、お礼として金を積んだ2頭のロバをくれました。とうとう幸運の子供は妻のもとへ帰りました。妻は再び夫に会い、彼がどれほど上手くやったかを聞いて、心から喜びました。
彼は求められていた3本の金髪を王に持って行きました。金を積んだ4頭のロバを見て、王は大いに満足しました。「全ての条件を満たしたから、娘を妻にしてもいい。しかし、婿よ、その金はどこから来たのだ?これは莫大な富だ」と王は言いました。
「船で川を渡り、そこに着きました。その浜辺には砂の代わりに金があったんです」と幸運の子供は答えました。王は、「私も取れるかな?」とそのことに非常に興味を持ち、尋ねました。
「好きなだけたくさん取れますよ。川に渡し守がいますから、川を渡らせてもらってください。そうすれば向こう岸で袋に詰められます」と彼が答えると、欲深い王は急いで出発しました。
川に着くと、渡し守を呼び、向こう岸に渡すように言いました。渡し守が来て、乗るように言いました。しかし、反対岸に着くと、渡し守は王に棹を渡し、飛び去ってしまいました。
それ以来、王は自分の罪の罰として、渡し守をしなければならなくなりました。おそらく今でもやっています。もしそうなら、それは誰も王から棹を受け取っていないからです。
グリム童話:金の毛が3本生えた鬼物語はこれにて幕を閉じます。また別の物語の世界でお会いしましょう。ぜひ、チャンネル登録やフォロー、コメントなどで応援してくれると嬉しいです。これからも良い作品を届けられるように頑張ります。
𝑅𝑒𝓁𝒶𝓍 𝒮𝓉𝑜𝓇𝒾𝑒𝓈𝒯𝒱
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